王子なドクターに恋をしたら
愛は人を強くするのだ!
「よ!久しぶりお嬢ちゃん」
「げ!?パワハラ上司!」
「何て言い草だよ、酷い奴だな。土産持ってきてやったのに」
あたしが働く実家の花屋にふらっと現れたのは和泉くんの上司の黒崎先生。
失礼なことを言うあたしに気分を害することなく東京土産のお菓子を手渡しニシシと笑う。
「何しに来たんですか。お仕事は?お忙しいんでしょ?」
「こんな田舎じゃ緊急手術も無いから暇なんだよ。そんな連れないこと言わないで構ってくれよ」
お土産を受け取りながら素っ気なく言うと子供みたいに口を尖らす黒崎先生につい吹き出してしまった。
和泉くんが斗浦部に通えなくなって、もう東京の明里病院とは縁がないと思ってたのに医師の出向は続いたようで和泉くんの代わりに黒崎先生が来るようになった。
伊藤先生や幸田先生もたまに来てるらしいけどあれ以来あの二人とは会っていない。
黒崎先生だけがあたしの居場所を和泉くんから聞いたようで時々こうやって顔を出し世間話をして帰って行く。
「外は真冬だって言うのに、ここだけは春だな」
お店の花々を見つめぼそっと呟く黒崎先生。
外はしんしんと雪が降り続いており、海も氷に覆われ白い世界が広がっている。