王子なドクターに恋をしたら

~ちゆ…僕の気持ちは決まったよ~

和泉くんのずっと悩んでいたこと、決心がついたとあたしに告げてからもうすぐ一年が経とうとしていた。


「奴から連絡はあるのか?」

「ええ、時々。忙しくしてるみたいですよ」

「帰って来る予定はあるのか?」

「…さあ、まだそんな話は聞いてませんが」

あたしは花束を作りながらあの日の事に思いを馳せる。



「半年か、一年か、もしかしたら3年かかるかもしれない。でも僕はドイツに行くことを決めたよ。医師として技術の向上の為、もっと強くなるために」

「ド、ドイツ?」

「うん、僕の論文が認められてドイツの病院に客員として呼ばれることになったんだ。なのに僕は行こうか行くまいか悩んでいたんだよ。これは僕の将来を左右する大事なことだった。だから黒崎先生たちは必要以上に僕に干渉して決めない原因をちゆのせいにしてちゆを排除しようとした。決めない理由はそれだけじゃないのにちゆに関しては僕も我慢ならなかったから反発心もあって意固地になってた部分もあった。僕の身勝手でちゆを不安にさせて悪かった」

信じられない展開にあたしはただただ驚いて何も言えなかった。
あたし達、また離れ離れになるの?

「ちゆ、僕は強くなるよ。そしてもう僕たちのことを誰にも文句は言わせない。だから、僕が帰るまで待ってて。僕から離れるなんて許さないよ」



< 250 / 317 >

この作品をシェア

pagetop