王子なドクターに恋をしたら


あたしが生まれた季節には海も氷で覆われる。
窓から見えるどこまでも真っ白な景色を二人で見たかった。
その景色を和泉くんは始めて見て千雪の名の通りだねと感激していた。

寄り添ってソファーに座り離れ離れの間を埋めるように近況を話し合う。
ドイツでは大変だけどとても勉強になると生き生きとした和泉くんの仕事ぶりを聞けた。
あたしは相変わらずだから明日美の話をする。

「へえ、明日美さんにもうすぐ赤ちゃんが」

「うん、性別も分かってて男の子なんだって。男の子って可愛いよね。來翔くんと陽飛くんめちゃくちゃ可愛いし」

久しぶりに会った時の來翔くんと陽飛くんを思いだして頬が緩む。

「そうだね。でも男の子もいいけど、僕は女の子が欲しいな」

「え?」

「ちゆにそっくりな女の子がいい。絶対可愛いよ」

「え…と、それって…」

へえ〜和泉くんは女の子がいいんだ…じゃなくて!
和泉くんとあたしの…ってこと?
突然のことで胸がドキドキしてきてその続きが声に出せない。

「待っててって、口約束だけじゃ不安でしょ?だから、形あるものを贈ろうと思って」

和泉くんがごそごそとポケットから出しあたしに見せてくれたのはむき出しの一粒ダイヤのリング。

「誕生日おめでとう千雪。必ず迎えに来るから、だからもう少しだけ待ってて」

約束、と言って和泉くんはあたしの左薬指にリングを通す。
あたしは信じられない思いでそのリングを見つめた。

「帰ってきたらもう離さない。千雪は僕がもらうから」

左手を引き寄せて恭しくそのリングに唇を落す和泉くんはまるで王子様みたいだ。

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