王子なドクターに恋をしたら
その姿をぼーっと見惚れていた。

「千雪、返事は?」

「…あ、はい!あたしも、もう離れたくない。覚悟を決めたの。どんなとこでも和泉くんに付いて行く!」

ハッと我に返ったあたしは勢いづいて返事をした。
和泉くんは目を丸くしてクスクス笑う。
い、今のって、今のって、プロポーズ?

「その覚悟、忘れないで」

首の後ろに手が回り引き寄せられると誓いを立てるように淡く優しく唇が重なった。
ゆっくり離れて甘く微笑む和泉くんにあたしは息を呑んだ。

どうしよう……
嬉しい!幸せ!感激!有頂天!
胸いっぱいでドキドキしすぎて苦しい!
これ以上なんてこの気持ちを表現したらいいの?

「和泉くん好き、大好き!」

「僕もだよ、千雪」

溢れる思いを声に出したら優しい瞳があたしを包みこむ。
微笑み合ってまた目を閉じたら、甘い余韻を遮るようにプルルッと電話が鳴った。

パチッと目を開けあっ!と気付く。
鳴ってるのはあたしの携帯。

今日は実家に帰る予定だったのに約束の時間はとうに過ぎていた。
慌てて出ればやっぱりお母さんから。
いつまで経ってもあたしが来ないから心配して電話を掛けてきた。

「ご、ごめん!今から行くから!」

ご馳走作って待ってるのに何してんのよ、とお小言をもらって平謝りで電話を切った。

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