王子なドクターに恋をしたら
学生かと思いきや、立派な大人だと言い張る千雪は可愛らしく拗ねていた。
それがやけに微笑ましくて気分が良くなって帰ったのを今でも覚えてる。

あのたった一瞬の出来事だったのに僕は千雪に強い関心を覚えた。
これは何なのか確かめたくて3日後もう一度展望台に行って再会した千雪といろいろ話をした。

田舎だけど好きなものがいっぱいあって一生ここで生きていくと言った千雪の目は真剣でハッとさせられる。
かと思えばちょっと迫っただけであたふたと慌てふためいて困った顔をする。
悪戯心が芽生えて構っているとくるくると変わる表情が可愛くてもっと見たいと思う自分がいることに気付く。

一緒にラベンダー畑を見に行く約束に指切りをしてそのまま小指を引き寄せキスをした。
子供の頃によくやった女の子を堕とす常套手段。
案の定千雪も顔を真っ赤にして僕を見る目が変わっていく。

悪い自分が顔を出した。こんなお遊び久しぶりだった。
好奇の目に晒されて少しうんざりしていたところだ、斗浦部にいる間千雪を構ってストレス発散するのも悪くない。初めはそんな軽い気持ちだった。

だけど毎日会うたびストレス発散どころか、荒んだ心が癒され凪いでいくことに否応なく気付かされる。
少しでも逢いたくて時間を作っては逢いに行ってる自分が滑稽で笑いたくなった。
もう認めざるを得ない、僕は千雪に惹かれている。

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