王子なドクターに恋をしたら
俺もう行きますんで、とそそくさと帰ろうとする彼を追いかけ店先で呼び止めた。

「君、千雪とはどういう関係?」

「どういうって…ただの同級生ですけど」

「ただの同級生が一緒に海に入ってずぶぬれで帰って来るの?」

「っ…それは!高校の時仲間内でよく行った釣り場に久しぶりに行ったらあいつが足滑らせて…」

じっと見てると彼は目を逸らし俯いた。

「ふーん、高校の時は仲が良かった?」

「ええ、まあ…仲が良かったですよ。男女関係無くグループで」

ふてくされたように言った彼にちょっと笑った。
千雪に今まで彼氏がいなかったのは聞いている。
彼が千雪に気があるのに友達関係を壊す勇気が持てずに手をこまねいてる様が手に取るようにわかった。
こういう子が本気を出したら千雪はどうするだろう。
僕のいぬ間にちょっかい出されてはたまったものじゃない。

「そう、でもいつまでも仲良し感覚で千雪に関わるのはやめてもらえるかな」

「なんであんたにそんなこと言われなきゃならないんだ!」

「また海に落ちて風邪を引かれては困る。高熱が出て大変だったんだ」

「っ…」

チクリと言ってやれば喰ってかかってきた勢いはピタリと止まり言葉に詰まってる様子。
彼も千雪が風邪を引いたことを気にしていたようだ。

「千雪は僕の恋人だ。これからは自重してもらえると助かる」

冷静に伝えたつもりだけど、彼は苦虫を噛み潰したように顔を歪ませ返事もせずに帰っていった。
まあいいさ、千雪が彼に靡かないよう僕が繋ぎ留めておけばいいことだ。

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