王子なドクターに恋をしたら
なんて、思ってはみたものの…僕に余裕なんてなかった。
同級生の男の存在もあって僕は千雪の傍に居られないもどかしさでいっぱいだった。

僕だってずっと千雪と一緒に居たいんだ。
寂しいと泣く千雪を抱きしめ僕は我慢できずに本音を漏らした。
お互い気を遣い謝り合ってばかりでこのまま東京に帰ってしまっては後悔しか残らない。
楽しい思い出を千雪に残したい。
そう思って千雪の体調も良くなってきたことだし約束のラベンダーを見に行くことに決めた。
もう少し内緒にしておきたかった家も見せてあげよう。
千雪を笑顔にするためなら何でもしたいと思った。

喜んでくれた千雪にキスをしたらもう我慢できるはずもない。
ご両親にホテルに連れて行きたいと言って驚かせてしまったけど僕はもう限界だった。
千雪に触れたい。抱きしめたい。
こんなにだれかを求め触れ合う幸福感を感じたことは無かった。
それはまるでラベンダーのように爽やかで心地よい。
荒んだ心が癒されて柔らかな優しさが芽生えて来るようだ。
千雪といると今まで知らなかった自分を発見してはこんな感情があったんだといちいち驚く。

千雪には笑われたけど治癒とちゆきをかけてちゆと呼ぶのを気に入った。可愛い響きは千雪にぴったりだと思う。

< 284 / 317 >

この作品をシェア

pagetop