王子なドクターに恋をしたら
「うつつなんて抜かしてません。関係ないですよ。余計なお世話です」

「ならそれを証明して見せろ」

「は?」

「論文を書け、女に逢いに行くのをやめろ、斗浦部に行くのも禁止だ」

「何言ってるんですか、遊びで行ってるわけじゃ無いんですよ?向こうでも担当してる患者はいるんです」

「ならそれだけ済ませて早々に帰るんだな。仕事の為に行ってるならそれで十分だろう」

日帰りでいいだろと簡単に言ってくれる黒崎さんを思わず睨む。
今でも多忙なのに斗浦部での穏やかな時間を取り上げられてはたまったものじゃない。

「横暴ですね。なぜそこまで黒崎さんに干渉されなきゃならないんですか?」

「俺はお前の腕を買ってるんだ、一人前に育てたい。アメリカ研修は女を捨ててでも喜んで行ったくせになんでドイツは駄目なんだ?その女はそんなにいい女か?まさか、体が目的か?」

「身体が目的でわざわざ斗浦部になんて行きませんよ!」

失礼な黒崎さんの言いように思わず声を荒げた。
でも、奇しくも僕は岡山さんと橋爪さんの結婚式で嫉妬に駆られて強引に千雪を抱いた。それでなくても行く度求めてしまう。黒崎さんの言ってることはあながち間違ってない。
つい考え込んでしまった。

「ほう…いつも冷静冷徹なお前が随分とその女に入れ上げてるじゃねえか。お前、結婚するつもりか?」

「結婚…?」

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