王子なドクターに恋をしたら
この僕が結婚?
まさか、出来るわけが無い。
ちゆのことは好きだけど、ずっと一緒にいたいとさえ思うのに結婚となると話が変わる。
思わぬことを言われて僕は少し混乱してた。

「………」

「そこで黙るということは結婚する気は無いんだな。なら今の内に別れろ。女の為にチャンスを棒に振るなんてお前らしくもない、頭を冷やせ」

「頭を冷やす…?」

「そうさ、お前はただ恋愛というものに熱を上げてるだけだ。頭を冷やせばそれが偽物だってわかるだろ。ドイツ行きか女か、お前に今必要なものはどっちか考えろ」

…ったく、散々遊んでるくせに骨抜きにされやがって、随分な悪女に捕まったものだな…。
黒崎さんの言い草には腹が立ったが僕は言い返すことが出来なかった。

自分の心が分からない。
好きで好きで、遠距離になっても誰にも渡したくなくて千雪を恋人にした。
なのにドイツ行きを渋るほど千雪の傍に居たいのに、結婚という言葉に躊躇する。

「僕は、どうしたいんだ…?」

これはもう黒崎さんの言う通り、頭を冷やさなければならないかもしれない。
僕自身の気持ちを確かめる為。
これからの自分の事、千雪の事。

逢うと、千雪の愛しさに引きづられて何も考えられなくなる。
このままじゃだめなんだ。

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