王子なドクターに恋をしたら

千雪の誤解を早く解いて安心させてやらなくては。
そう思って急いで帰ったのに玄関は閉じられたまま人気が無い様子に嫌な予感がした。
兄さんの家に行けば聡子さんが出てきて千雪は朝顔を出したけど用事があると言って出て行ったと言う。
まさか、ここには知り合いもいないのに何処に行くと言うんだ？
ふと、玄関横の棚に見慣れた鍵を見つけた。

「これ、うちの鍵じゃないか…」

「あら～？いつの間に、知らなかったわ」

千雪さん置いてったのかしらとのんびり言ってる聡子さんを残して急いで家に戻ると鍵を開けしんと静まり返った玄関にあるはずの千雪の靴が無いことに気付く。
寝室、リビング、他の部屋も全部見回って千雪の姿が何処にもいないと悟って愕然とした。
いつもの殺風景な部屋は寒さを感じてしまうほど虚しい。
荷物も無いと言うことは完全に出て行ってしまったということだ。

いったいどこに…？
そう思って千雪の言葉を思い出す。
～あたし、おうちで待ってるから～
まさか斗浦部に帰った？
千雪にとって僕たちの家は斗浦部の白い一軒家だ。

きっとそうだと思ったら、後は行動するのみだ。
手早く支度をして、幸田先生に電話をして散々脅して休みを代わってもらった。
あれだけ酷い事を千雪にしたんだ、これぐらいしてもらわなくては困る。