王子なドクターに恋をしたら

僕らは…



久しぶりの明里病院に懐かしさを感じながら挨拶をしに黒崎さんを訪ねた。
僕のいない間に主任だった黒崎さんは外科部長に昇進していた。
そして、驚くことにどういう経緯なのか、紘子さんと結婚していた。
今は妊娠中で産休を取って休んでるという。

「な…いつの間に?でもよかった。幸せにしてあげてくださいよ?」
「おう!任せとけ!」
軽く返事する黒崎先生に胡散臭いと座った目を向ける。
黒崎さんはバツイチだから上手くいくのか少し心配だ。

幸田先生は…と遠慮気味に聞くと、「まああいつは…人を貶めようとすると自分が嵌るってオチだよな~」と黒崎さんは気まずそうに言っていた。
とはいっても幸田先生は不貞腐れることなく今でも真面目に医者を続けてると言うから心配ないだろう。伊藤先生も健在だと言う。
じゃ、と挨拶も終わって帰ろうとすると呼び止められる。

「お前、後悔しないのか?」

「しませんよ。これが僕の人生です。もう、誰にも邪魔させません」

「ふっ…もうとやかく言えないほどお前は立派にやってるよ。…ああ、千雪によろしく言っといてくれ」

「は?なんで黒崎さんが千雪を呼び捨てにするんですか?」

剣呑な目を向ければにやりといつものしたり顔。

「千雪がそう呼べって言うからさ。俺、懐かれてっから~」

そんなことは絶対にない。
でもちょっとムカつく。
これは千雪に問い質さなくては。

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