王子なドクターに恋をしたら
黒崎さんと別れ帰ろうとすればまた呼び止められた。

「高槻…」

「幸田先生…」

ちょっと気まずい雰囲気に一瞬黙りこんだ。
あの時以来僕がドイツに行くまでほとんど口も利かず喧嘩別れのようになっていた。
先に口を開いたのは幸田先生。

「あの時は、悪かった」

「え?」

「あの時、余計なことをしてお前の彼女を傷つけたこと。ずっと、謝りたかったんだ…今日までほんとに悪かった!」

真摯に頭を下げて謝る幸田先生に面食らった。

「いや…もう気にしてませんから。何年前の話だと思ってるんですか」

だってお前ドイツ行っていなかっただろう!と逆切れされて笑ってしまった。
ずっと気にしててくれてたなんて幸田先生は実は人がいい。

「ははっ、もういいですよ。幸田先生は失恋の痛手はもう癒されたんですか?」

「ぐ…別に俺は失恋なんかしてない!」

「へえ、そうなんですか?」

「っ…彼女が幸せならそれでいいんだ…」

すっと見透かすように聞くと観念したかのように幸田先生はぽつりと言った。
やっぱり、幸田先生は実はお人好しだったんだと知れて良かったと思った。

さて、挨拶も終えたし、帰ろう、千雪の待つ家へ。
病院の外へ出ると眩しい青空に目を細め、爽やかな風が僕の頬を掠めていった。
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