王子なドクターに恋をしたら
……

「良かったね、これからずっと和泉くんと一緒にいれるんだよね…」

散々寂しい思いをさせてきたからか不安で何度も聞いてくる千雪を後ろから抱きしめその左手を取った。
指を絡め薬指にある二人お揃いのリングにキスをする。

「僕らは結婚したんだ。これからずっと一緒だよ」

「うん…まだ信じられなくて…」

入籍だけ済ませ結婚式はまだこれからだから実感が湧かないのかもしれない。
ずっと待っていてくれたこの3年の月日を思うと千雪の寂しさはすぐに拭い去れないほど蓄積されてきたんだと思い知らされる。
これからは時間を掛けてゆっくりと千雪の気持ちを和らげていきたい。

「寂しい思いをさせてばかりでごめんね。でもちゆが待っていてくれてると思ったから僕は仕事に邁進できたんだ、すごく感謝してるよ。これからは側にいて僕を支えてほしいんだ」

「うん…あたし、和泉くんと出会えて本当に良かった。王子さまみたいな和泉くんがあたしを好きになってくれるなんて今でも奇跡だと思ってるよ」

まだ僕を王子様だと信じてる千雪に、自分の本性を全て見せてはいない。
でも、もちろん浮気なんてする気はさらさら無いし、千雪はどんな僕でも好きでいてくれると確信している。

「医者は時に奇跡を信じるけど、僕らが出逢ったのは偶然じゃなく運命だよ。僕は千雪と出会うためにこの斗浦部に導かれたんだ。帰国したばかりのタイミングで腰を痛めた叔父さんも必然だった」

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