王子なドクターに恋をしたら

晴れの日に

あたしは、不思議な夢を久しぶりに見た。

その夢を見た朝はやっぱり涙を流していて隣で目を覚ました和泉くんに随分心配された。
きっと、体調の事もあるしいろいろ忙しくてナーバスになってるに違いないと和泉くんは言うけれど、あたしの心は穏やかだった。

今日この日にあの夢を見るのはきっと何か意味がある。
そう感じてじっと鏡を見つめた。
あたしに似ていた彼女は何を言っていただろう?
微かに覚えているセリフははっきりとしなくてちょっともやもやする。

「はい、出来たわよ」

「わあすごい!綺麗!豪華!」

鏡越しに満足そうに頷くお母さんに我に帰ったあたしは自分の姿をもう一度鏡で確認した。
メイクさんが綺麗に編み込んでくれた髪形にお母さん特製の生花の花冠が頭を飾る。
白いバラやカスミソウに交じって青いデルフィニウムが混じっているその花冠はまるで雪と海を表してるよう。

「千雪~来たよ~」

「あっ、明日美、宗汰(そうた)くん」

「うわっ!綺麗!千雪!」

「ふふ~、ありがと」

明日美はゆったりしたドレスでおめかしした2歳になる長男の宗汰くんと来てくれた。
雪のように真っ白なドレスに身を包んだあたしを見て感激の声を上げる明日美につい照れ笑い。

< 312 / 317 >

この作品をシェア

pagetop