王子なドクターに恋をしたら
ショックだ…。
やっぱり和泉くんはあたしとは今だけの付き合いと思ってるのかな？
東京に帰って行ったらあたしの事なんか忘れちゃうのかな…。
なんだか悲しくなって涙が出てきてぽたりと雫が落ちた。

「ご、ごめん。今のは言い過ぎた」

「…ううん。あたしも少しは思ってたから…」

明日美があたしの涙を見て慌てて取り繕う。
明日美は厳しいことも言うけどあたしの事をほんとに心配してくれてる優しい親友。その優しさが身に染みる。

「…院長先生の腰もだいぶ良くなってさ、少しずつ診療も再開してるんだよね。そうしたら高槻先生もうここに居る理由も無くなるから…」

「もうすぐ、帰っちゃうんだね…」

「うん、近いうちに」

そうだよね。
毎日会ってて、毎日幸せであたしは忘れかけていた。
もうすぐ、和泉くんとはお別れなんだ。

「…うん、大丈夫。あたしは大丈夫だよ。これでサヨナラしても後悔しない。和泉くんと出逢えて好きになって良かったって心からそう思えるから。だから、大丈夫…」

「千雪…」

泣き笑いで、何度も大丈夫って繰り返してあたしは自分に言い聞かせた。

明日美まで泣きそうな顔になって思わず吹き出すと、千雪ったら！と明日美は涙目で頬を膨らます。

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