王子なドクターに恋をしたら
・・・・・

冷え冷えする夜風に当たりながらてくてくと坂を上る。
あたしの密かな楽しみ、夜の散歩。

着いたのは丘の上にある斗浦部中央公園。
木々の間の整備された道を登り切ると町を一望出来る小さな展望台が建っている。
真っ暗な空にぽっかり浮かぶお月様。
月光が波にキラキラ反射して綺麗だ。

昼間は町と海が一望出来る展望台。
それもいいのだけど、夜空と月明かりが揺れる海を見るのがあたしは好きだった。

あたしの家は海近くの商店街の中。
海の音は聞こえても海は見えなくてよくここに来る。
真冬はさすがに雪に埋もれて来れないのだけど、やっと雪も解けてきて人が通れるようになったから久々に来てみた。

たまにカップルがいちゃついてたりして急いでUターンすることもあるけど、まだまだ寒い今日は誰もいないだろうと油断していた。

夜でも入れる展望台をゆっくりと上がり、外に出たところで人影が見えてギクッとした。

「あ…」

「ん?」

月明かりだけで背の高い男の人だと分かる。
他には誰もいないようだけど気まずいから帰ろうと踵を返したところに声を掛けられた。

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