王子なドクターに恋をしたら
「ちょっとまって」

何だか分かんないけど、甘くて優しい響きに思わず立ち止まった。
かつかつと靴音が迫ってきて咄嗟に振り向いた。

「君、中学生?こんな夜更けにこんなところで何してるの?親御さん心配しないかい?」

「はい?」

23歳のあたしをよりにもよって中学生と間違えた!?
むっとして逆光で顔ははっきり見えないけどその男の人を睨む。

「あたし、これでもれっきとした23の大人ですけど!?」

「え!?ああ、そうなの?ごめん」

焦った男の人は参ったなと頭を掻いている。
でも真剣な声色であたしを窘めた。

「でも、やっぱり女の子がこんなとこ一人で来るのは危険だよ」

「大丈夫ですよ、しょっちゅう来てるけど危険なことなんてないですから」

ふんと鼻を鳴らして、カップルとはち会うことはあるけどね、と心の中で言っておく。

「景色を見に来ただけなんですけど、でも、帰ります。さよなら」

「あっ!ああ~待って!怒らせたならごめん。景色見に来たんでしょ?僕はもう行くからどうぞ」

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