王子なドクターに恋をしたら
もっとずっと一緒にいたかった。
和泉くんに触れてその暖かさをずっと感じていたかった。
でも無情に過ぎていく時間は誰も止められない。
正味一時間程度の逢瀬は終わり、和泉くんはあたしを家まで送った後帰って行ってしまった。
仕事を押してまで逢いに来てくれた事はとても嬉しかった。
でも行ってしまうと急に寂しくなる。
家に帰るとお母さんがあたしの顔をまじまじと見てから顔洗ってきなさいと言った。
なんだか笑われてた気がして首をかしげながら洗面台に行って鏡に映る自分の顔を見てギョとした。
「何これヒドッ!」
あられもない自分の顔に頭を抱えて叫んだ。
寝不足の隈はくっきり残ってるし泣いたから瞼は腫れてるし、唇までタラコみたいに膨れて真っ赤だった。
これはもう散々キスをして、何度も吸われ甘噛みされたせい。
和泉くんは別れ際にもキスをして親指であたしの唇を何度も撫でてくすりと笑って帰って行った。
絶対あたしの顔が可笑しくて笑ってたに違いない!
「んもうっ!変な顔してるなら教えてくれれば良かったのに!和泉くんのバカ!」
あたしはジャーッと勢いよく水を流しながら叫んでジャブジャブと顔を洗ったのだった。