王子なドクターに恋をしたら
「ね、ねえ、飲み薬でいいから、注射はやめない?」

「ん?ダメだよ熱を侮っちゃ。熱性けいれんを起こしたら大人でも危ないからね。千雪はもう大人だから注射ぐらい我慢できるでしょ?」

「やっ…ヤダよ~大人だって注射は痛いんだから~」

泣き言を言って逃げようとするとグッと和泉くんに抑えられ、真上に鼻が付きそうなぐらい顔が近付いた。
久々に間近で見た和泉くんのブルーの瞳に引き込まれ目が離せない。
唇が近付いてきてキスされるかと思った。

「千雪、大人しく注射させてくれたらキスしてあげる」

「えっ!?」

ふっと笑った和泉くんが離れていき、あたしはあうあうと言葉にならない。
それって患者に言うセリフ!?と思いつつ、そんな条件出されてあたしはどうすればいいの!?

き…キスして欲しい!
でも注射は嫌だ!キスの為に注射を我慢するの!?
でもキスしたら和泉くんに風邪が移っちゃうかも…。
で、でもやっと逢えたのにキスも出来ないなんて寂しすぎる!
頭の中はぐるぐる考えすぎて沸騰しそうだ。

「はい、おしまい。よくがんばりました」

「へ!?」

その声に和泉くんを見るとあたしの腕に小さい絆創膏を付けて注射器をしまっていた。
腕と和泉くんを交互に見て何が起こったのかやっと気付いた。

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