王子なドクターに恋をしたら
「も、もう終わったの?」

「そうだよ?」

「全然痛くなかった…」

「でしょ?これでも注射は上手いんだよ?」

和泉くんは道具をしまいながら得意げに笑った。
あんなに痛くて怖くて嫌いだった注射がいつの間にか終わっててあたしは力が抜けた。
こんな呆気ない注射は初めてだ。
和泉くんって凄い!
感動してると全てしまった和泉くんはあたしに手を伸ばし頭を撫でる。

「キス、して欲しいと思った?」

「え!…その…でも…風邪移っちゃうし…」

頭を撫でる優しい手にうっとりしてるとそう言われてなんて言っていいのかしどろもどろになってしまう。

「僕はキスしたいと思ったよ。千雪は熱出して辛いのにダメだよね、医者がこんなこと考えるなんて」

「えっそんな、あたしも…して欲しいって、思ったよ…」

恥ずかしくなって布団で口元を隠しか細い声で言ってしまった。
和泉くんはスッと布団をよけ腕を折りあたしの上に覆いかぶさってくる。

「そんな可愛い顔で言われると…やっぱり僕は我慢できない性格だな」

自嘲気味に笑った和泉くんが掠めるようにあたしにキスをした。

「風邪、移っちゃうよ?」

「僕は丈夫にできてるから大丈夫だよ、風邪は人に移すと治りが早いって言うだろ?」

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