王子なドクターに恋をしたら
そんな医者らしくないことを言ってまた唇が触れ吐息がかかる。

「待たせてごめんね。千雪が倒れてるのを発見した時は心臓が止まるかと思った」

「あたしの方こそごめんなさい。大人しく家に帰ってればよかった。こんな和泉くんに迷惑かけて、ダメだねあたし融通が利かなくて」

「びっくりはしたけど迷惑なんて思ってないよ。逆に千雪をこうして治療出来るんだから、医者でよかったと自分を褒めたいくらいだ」

唇を触れ合せながらあたしたちは謝った。
あたしの吐息は熱くて頭は朦朧とするけど和泉くんを感じて胸は喜びで溢れた。

「息苦しかったら言ってね…」

和泉くんがそう言うと触れるだけだった唇がチュッと吸われ、強く合わさり濃厚になっていく。
舌が口内を侵し唾液まで吸い尽くすように吸われ気持ちよさと息苦しさがあたしを襲った。

苦しい…和泉くんに風邪が移っちゃう…でも気持ちいい…。
頭や頬を撫でられそれがまた気持ちよくてあたしはキスに酔いしれた。

「好きだよ千雪…逢いたかった…」

「んん…あた…しも…」

遠退いて行く意識の中で囁かれた声はあたしを微睡へと落していった。



< 87 / 317 >

この作品をシェア

pagetop