王子なドクターに恋をしたら
「そうなのよう~はーふでいけめんときたら見てみないとねえ!ほんっと!この世の人とは思えない神々しさだったわよ!」

「そうなの~?あたしも明日病院行くから見に行ってみようかしら?」

「何時にも増してすんごい人だかりだったから見るのに苦労するかもねえ~」

「あらやだ、みんな見物に行ってるの?迷惑な話ねえ~」

言い慣れない言葉を繰り出し、あはははは~と、笑って話に花を咲かせるおばちゃんたちの声が耳に入ってきて、思わず聞き耳を立てた。
あの人の話だってすぐ分かる。
見に行くなんて迷惑ね~なんて言いながら行く気満々のおばちゃんたち。
呆れながら、でも、いいなあ~と一人ぼやいた。

あたしもこっそり見に行ってみようかな?
明日美に会いに行くふりしてさ。

いや、明日美にもそれは迷惑でしょと突っ込んだ手前、行きづらいな。
ほれ見たことか!と得意げに笑う明日美が目に浮かぶ。
別に、明日美に笑われたっていいんだけどさ。
でもやっぱ行きずらいな。

せめてあの展望台でまた逢えたらいいな。
そう思ったあたしは、夜にまた散歩がてら公園に向かった。
今日は雲が多くて欠け始めた月が見え隠れする。
辺りに人気はない。
きっといないんだろうなと思いながら頂上にたどり着くと黒い人影がこちらを振り向いた。

「あ」

「あ…」

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