王子なドクターに恋をしたら
………

「和泉くんって恥ずかしげもなくああいう事言えちゃうんだね」

「ん?だって千雪を連れ出すのに他に言いようが無いだでしょ?僕達は恋人同士なんだし、千雪のご両親に嘘は言いたくないんだ」

お父さん達に言い放った和泉くんの言葉を思い出してあたしが笑うと和泉くんは至極当然というように真面目に言った。
真剣にそう言ってくれるだけであたしの心は歓喜に踊る。

ここは斗浦部町唯一のビジネスホテルの最上階のスイートルーム。
二人ベッドに座りキスをしながら和泉くんは器用にあたしの服を剥いでいく。
窓の向こうには町並みの明りと綺麗な星空と真っ黒な海が広がっている。
昼間見たらきっといい眺めなんだろう。

古いホテルでシンプルな内装だけど掃除が行き届いていて居心地がいい。
広い室内には一人掛けのソファーが2つにテーブル、ベッドが2つ。
一人で泊まるにはいささか広い気もしたけど、千雪と泊まるつもりだったからと照れながら言う和泉くんにあたしはまた熱を出してしまって予定が狂ってしまったことに罪悪感を感じた。

そんなあたしのすべてを包み込むように和泉くんはあたしを抱きしめてくれる。

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