あのときのキスを
「うそ…」

ピンクの浴衣の女の子は、龍に寄り添ってぴったりと体をつけた。


あたしは両手を口でふさいだ。

叫び声がもれてしまいそうだったから。


「世界中の誰よりも好きだ」

頭の中で何度もリピートさせた龍の言葉が渦巻く。

「うそだったんだね」

涙があふれて、空の花火が水彩のように滲んだ。




「ほのか?どうした?」

純也があたしの涙に気づいた。

視線の先には、龍の後姿。

純也は舌打ちした。

それから、あたしの涙をせきとめようと、純也は指先であたしのほっぺたを何度も拭いた。

「ごめん、純ちゃん、とまんないよ」




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