あのときのキスを
純也の顔が近づく。

あたしは状況が一瞬の見込めなかった。

純也の唇が引き寄せられる。

心臓がドキドキする。

純也の男っぽいにおいが鼻をくすぐる。

あたしは目をきょろきょろさせた。


「おにい…」


思わず漏れた言葉をせき止めるように、唇が塞がれた。


それは純也の指先だった。

唇に指先をあてて、その上から純也の唇が重なる。

純也の長いまつげが戸惑うように震えている。

私の唇に、その震えが伝染する。

体が熱い。

「ほのか…」

純也がささやいた。


「好きだ」




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