あのときのキスを
あたしはちょっと落ち込み気味だった。

ここ最近、龍は部活が忙しくなって、一緒に帰ることができなくなっていた。

夜は疲れてすぐ寝てしまうみたいで、メールの返事も来ない日が多くなった。

結局、花火大会のその日まで、なんの約束もできないまま。



「三度の飯よりサッカーがすき」

新学期の自己紹介で龍はそう言った。

ボールを追いかける龍は、すごくいい顔をしてる。

三度の飯より、サッカー、

じゃあ、あたしのことは?


「世界中の誰よりも好きだ」


そう言ってくれた龍。

龍、どうしちゃったの?


あたしは、お祭りの夜にぽつんとひとりになってしまった。


そんなあたしを誘い出したのは、兄・純也だった。




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