あのときのキスを
花火大会に一緒に行かないなんて、純也は杏さんと、うまく行ってないのだろうか。

それは少し残念だ。あんなに可愛い人が自分の兄貴の彼女だなんて、ちょっと自慢になる。


そう思いつつ、どこかで心が浮き立つ。



大きな花火が打ちあがって、金色に染まった夜空が見上げる人たちを照らした。

「わぁーっきれい!見て!純ちゃん!」

私は思わずぴょんぴょん飛び跳ねて声を上げた。


そのとき、人波のなかで、一人の人影が、こっちを振り返った。




「龍…?」

龍は、どこかを痛めたような表情をして、目を伏せた。

彼の手は、隣に居るピンク色の浴衣姿の女の子とつながっていた。





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