嘘恋愛者
それは想像以上に楽しかった。
『告白させることができるか』がいつのまにか、『どれだけの期間で告白させることができるか』になった。ターゲットのほぼ全員に告白され、できるできないでは賭けにならなくなったからだった。
本当に、最高で最低な暇つぶしだった。
でも、もうできないし、やりたくない。
「もしかして夏輝、あの子のこと本気で好きになってない?」
蒼生に言われて、俺は顔を上げた。
なるほど、そういうことか。
藤枝さんの笑顔に癒されていたのも、うまく会話ができなかったのも、恋愛を遊びでできなくなったのも、俺が藤枝さんを好きになったからか。
俺は一人で納得した。
しかしこの気持ちを藤枝さんに伝える勇気はない。もし伝えたとして、断られたら死ぬほどつらいだろう。
それに、告白して断られるとどうなるか、それは嫌というほど知っている。
関わらない。知り合う間に戻ってしまう。
それだけは、嫌だ。
人を好きになって、俺はやっと自分がやっていたことがどれだけ最低だったかがわかる。
「ちょっと、聞いてる?」
蒼生は見るからに不機嫌だ。
「聞いてるよ。とにかく、俺はもうあのゲームはしない。藤枝さん……彼女といるのは、ゲームとか関係ないから」
それをわかっておきながら、火に油を注ぐような言い方をしてしまった。
せっかく戻りかけた関係を、俺はまた切ろうとしている。
だが、ただの利害の一致でいただけの関係だ。切れても問題ない。
蒼生は面白くなさそうな顔をすると、そのまま俺の席を離れていった。