嘘恋愛者
 ……なんて、俺の勘違いだろうけど。でも、そうであってくれたら死ぬほど嬉しいわけで。


「……藤枝さんって、好きな人とかいる?」


 話の流れを無視した質問に、藤枝さんの表情が戸惑いを見せる。


「えっと……どうして?」


 俺もどうしてそんなことを聞いたのか、正確にはわからない。いないでいてくれたらいいな、という風にしか思っていない。


 答えは気になるけど、聞きたくないという気持ちが勝ってきた。


「夏輝が藤枝さんのことが好きで、藤枝さんに好きな人がいないか気になってるからだよ」


 その質問をなかったことにしようとしたのに、俺の台詞に被せるように、誰かが言った。


 藤枝さんの後ろに、蒼生が立っている。


 藤枝さんが小悪魔だとしたら、蒼生はただの悪魔だ。しっかりと俺の邪魔をしてくれた。


「柿原君が、私を……?」


 藤枝さんが蒼生を見ているから、今どんな表情をしているのかわからない。


 だが、取り返しがつかなくなってきたことだけはわかる。こんなことになるなら、はやく自分の言葉で言っておけばよかったと思うが、もう遅い。


「……蒼生、邪魔するなよ」


 俺はそれしか言えなかった。


「そうだよ。あと少しで、柿原君をふることができたのに」
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