SIREN


 「漣……?」


 漣って、あの?


 私の考えが伝わったのか、漣紅蓮と名乗った美しい男の人は眉を下げた。


 「……怖い、か?」


 その姿がなんだか可愛く見えた。


 「っ、いや……。あの、私どうしてここに?」


 「怪我を、していたから」


 何やら言いにくそうに視線を逸らしてしまった彼を見て不思議に思う。


 「あ、手当てありがとうございます」


 ペコリと頭を下げれば、「ああ」と優しい声が返っていた。


 「……腕は大丈夫か?」


 「まだちょっと痛みますけど、大丈夫です」


 本気で心配しているような目が私を見て、私が想像していた " 漣 " とはまったく違っていた。

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