SIREN
私はまだ、本当の愛を知らない
もう訳がわからないほど、ヒステリックに叫ぶ女の声で耳が痛い。
「ごめんなさいっ」
必死に男に縋るこの女……私のお母さんを冷めた目でみる。
「嫌よ!行かないで……!」
昔から「他の子とは違うわね」と、よく言われていた。
泣きもしないし怒りもしない。
我が儘だって言わないし、笑いもしなかった。
それが気持ち悪かったのか、お母さんは私を毛嫌いしていた。
でもそれを態度に出したりはしないで、常に目の奥で嫌悪感を抱きながら私に接していた。