SIREN
「いい子だ」
彼はふわりと柔らかい笑みを浮かべて私の頭を撫でた。
「あ、えと、どうして私の名前を……」
「あぁ……、悪りぃ、調べた」
さも平然と言う彼に、思わず目を見開く。
「そ、そうでしたか……」
別に何も後ろめたいことはない。だから私の情報を見られても構わないけど、家族の不仲、母が私を嫌っていることを知られるのは少し抵抗があった。
まぁ、いいか。
知られて何かあるっていうのなら嫌だけど、こうして手当までしてくれた人だ。ヤクザだけど、結構いい人なのかもしれない。
再び沈黙が訪れたが、先ほどよりは気まずくなかった。
「紅蓮、組長が呼んで……、え」
静かに襖が開いたと思えば、これまた顔の整った男の人が入って来た。