SIREN
抱きしめらたことがなかった。
愛なんて、囁かれなかった。
今思えば、名前さえ呼ばれていなかった気
がする。
「私を捨てないで!!!」
嗚呼。なんて、滑稽なんだ。
私は自分のお母さんを、心の中で嘲笑った。
「吹雪、ごめんな」
お母さんを無視して、私の頭を撫でたお父さん。
「いつか、絶対……」
その後に続いた言葉に、私は期待すら抱かなかった。
……お父さんなんでこんな人と結婚しちゃったんだろうね。
辛そうな顔のお父さんに、心底同情するよ。