SIREN


 「あなた!!」


 お母さんが掴んだ腕を振り払って、お父さんは家から出て行った。


 「どうしてっ!どうしてよ!?」


 嘆いているその姿に、緩む口元が抑えきれなかった。


 「っ、何がおかしいのよ!?」


 それに気づいたお母さんが、手を振り上げて私の頬を叩いた。

 何度も叩いて、痛かった。

 ただそれ以上の感情はなくて、お母さんの気が済むまで殴らせてあげた。

 
 「お父さんじゃなくて、あんたが出て行けば良かったのよ!!」

 
 平手だった手は、拳を使っていて痛みは身体中に広がっていく。


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