翠玉の監察医 法のあり方



安置所は、ドラマに登場するように故人を寝かせる台が置かれた薄暗い部屋だ。どこか冷たく、圭介はブルリと体を震わせる。

「そういえば俺、安置所に来るのは初めてです」

「今までは直接研究所にご遺体が運ばれていましたし、安置所に来る予定がありませんでしたから……」

蘭は台の上に置かれた遺体を見つめる。警察官と共に連絡を受けた遺族を待ち続けた。そして二時間ほどした頃、廊下を歩く音が聞こえてくる。蘭の目がスッといつもより暗くなった。

「由美子!」

「お母さん!」

ドアが開いた刹那、スーツを着た男性と中学校のセーラー服を着た女の子が焦ったような表情で入ってくる。そして冷たい台の上に寝かされた変わり果てた由美子の姿を見た刹那、女の子が声を上げて泣き出した。

「お母さん!お母さん!何で!?何で死んじゃったの!?」

激しい悲しみをぶつけるその姿に、圭介の胸がギュッと締め付けられる。うまく息が吸えない。
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