翠玉の監察医 法のあり方
「蘭ちゃん、深森くん、悪いが一緒に来てくれ。××付近で女性が血だらけになって倒れて亡くなっているらしいんだ」

「わかりました」

蘭は無表情のまま答え、支度を始める。チェックのワンピースの胸元にあるエメラルドのブローチが煌めいた。



桜木刑事の運転する車に乗り、蘭と圭介がやって来たのは人通りの多い通りの近くにある住宅街だった。

現場には黄色いテープが張られ、多くの野次馬が集まっている。無表情な蘭の横で圭介は緊張したような顔をしたまま、テープをくぐる。

「桜木さん、神楽さん、お疲れ様です!!」

蘭と桜木刑事に警察官が敬礼をする。桜木刑事は「遺体は?」と訊ね、蘭と圭介は遺体の元へ案内された。

「これは……!」

想像よりひどい遺体に、圭介は顔を真っ青にする。道路に倒れ、亡くなっているのは三十代後半から四十代前半と思われる女性だった。しかし、身体中が血で真っ赤に染まっている。女性の体から流れた血は、道路に広がっていき、大きなシミを作っていた。
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