ソルティ&ドルチェ
昼休み。廊下を、歩く。
ふと、途中に徹がいるのが目についた。
(なんであいつを目で追いかけてんだ、私…)
軽く頭を抱える。
徹は、同じクラスの佐藤や堀口と話をしている。
へらへらと笑っているが、その姿は異国の王子みたいだ。
(あ、これか。あだ名が"王子"なの)
水飲み場に置いてある花瓶の水を取り換えながら思う。
ピンクのサザンカが水に濡れる。
「ねー、知ってる?ピンクのサザンカの花言葉」
「えっ、知らなーい!教えて-」
「なんと、"永遠の愛"!」
「やだー、ロマンチック‼」
「なんでそんな花言葉の花選んだんだろーねー」
「ほんっと!不思議‼」
「そういえば新色のリップがさー…」
「え、なになに…」
多田さんと石島さんの声がうしろからする。
ふと、彼を見る。
誰にでもなつっこい。
態度が甘い。
一度くっついたらとろりとして、絡み付く。
外見がキラキラしている。
見た目に反して、甘い。
暴力的な位までに、甘い。
(はちみつ、みたいだなぁ)
私はそう考えた。
(見てるだけなら王子様っぽいのになぁ…)