ソルティ&ドルチェ
わたあめ
帰り道。
今日はいろいろな事があったなぁ。
後ろを振り返ると、徹が付いてきている。
「渚!ごめん、500円貸して!」
へらへら笑いながら徹が手を合わせる。
さっきまで冷たい視線を送っていたのとは大違いだ。
「こないだもそうやって頼んで、返さなかったでしょ」
「えー、頼むよ~」
まったくもう、と言いながら財布から500円玉を出し、徹にあげる。
「わーい、ありがとー!」
ふいに冷たい風が吹いた。
「うっ、寒っ」
思わずそう口に出す。
季節はもう秋の後半。
「渚、どうしたの?」
「いや、ちょっと寒くて…」
指先を擦りながら答える。
「それなら」
徹が言う。
徹は鞄のなかを探しはじめ、マフラーを取り出した。
そして、私の首にマフラーを巻き付け、リボンみたいに結んだ。
「どう?これで寒くないでしょ?」
「そんなことをしても500円はチャラにならないよ」
えー、と徹が声を出す。
でも、確かに暖かい。
それに、徹の匂いが染み付いている。
なんとなくその匂いに安心感を覚えた。
「じゃーね!」と徹が言う。
徹の姿は、夕焼け空に消えていった。
帰り道道を一人とぼとぼと歩く。
私は、あいつの事が好きなのだろうか。
(いやでも、あいつとは幼馴染みだし…)
ちょっと告白してくるだけで。
そう考え、曖昧に笑う。
こんな寂しい秋の日には、昔の事を思い出す。
(幼稚園の頃位に、なんかあったなぁ)
確か、[徹のお嫁さんになりたい]とか言ってたっけ。
思わず想像してしまい、首を横に振る。
(あいつのお嫁さんとか、絶対、絶対あり得ない!)
「はぁ…」
顔に両手を当てながら家の方向に進んだ。