ソルティ&ドルチェ


家に帰ってきた。オレンジ色の光が窓から漏れている。


「渚、ご飯できてるわよ」


お母さんが声を張り上げる。


鞄を置き、食卓につく。


今日のご飯は麻婆豆腐だ。


「あんたは辛いの苦手だったでしょ」


そういって、お母さんは赤さの薄い方を私のお椀に注ぐ。


「いただきます」


箸を取り、ご飯を口の中に入れる。


「お母さん、これ新米?すごく美味しい」


「そうよ。畠中さんから貰ったの。美味しいでしょ。」


「うん。めっちゃ美味しい。新米サイコー‼」


「最近学校はどうなの」


麻婆豆腐を口に入れながら答える。


「別に普通だよ。なんも変わりない」


「あらそう。で、赤羽くんとは?どんな関係?」


眉をしかめながら言う。


「あいつとはただの幼馴染みだって」


「そう。でも、幼稚園のとき、確か…」


「止めて」


「「徹のお嫁さんになる」とかなんとか…」


「やめてってば‼」


思わず赤面する。なんでさっき考えていた事を…


「でも、上手くいっているなら良かったわ」


そういってお母さんはご飯を食べる。


「早く食べ終わってお風呂入って、寝なさいよ」


「はーい、りょーかーい」


そう言うと私は食べ終わった食器を流しに置いた。


「まあ、将来は安全そうね。」


「?」

お母さんは麻婆豆腐を頬張りながらそう言った。


てか、それってどういう意味…?


考えながらお風呂に行く。


服を脱ぎ、鏡を見る。


他の子よりあまり大きいとは言えない胸。


スタイルもあまりよくなく、身長は低い。


顔もあんまり可愛くないし…


(なんでこんな私に告白してくんだろ)


嫌がらせかなぁ。でも徹の事だしそうじゃないと考えたい。


(だったら、やっぱり私の事が好…)


いやいや。それはない。告白も冗談に決まってる。


泡が私の肌を滑る。


せめて彼には似合う美人になろう。


そう思い、体をお湯で洗い流した。





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