ソルティ&ドルチェ


ベッドに横たわる。


ドライヤーで乾かしたものの、まだ濡れている髪が首筋に伝う。


(あいつの事、好きなのかな)


好きなわけない。そんなはずない。


でも、あいつの事を考えると、胸が痛む。


あいつが他の女の子と話してると、妬ましく思う。


あいつが私に構ってくれると、嬉しくなる。


これって、恋なのかな。


うさぎのぬいぐるみを抱く。


ピンクの柔らかい生地が、私を安心させてくれる。


古典でやった、伊勢物語を思い出す。


筒井筒だっけか。幼馴染みが結婚するの。


確か、幼馴染みがお互いを異性として見はじめ、結婚する。


みたいなストーリーだったら気がする。


あいつは、私の事が好きなのだろうか。


「私は、徹が好き」


そっと口に出してみる。


恥ずかしい。すごく恥ずかしい。


(あいつは、こんな恥ずかしい言葉を何回も…)


案外、本気だったりして。


身悶えして、掛け布団がめちゃくちゃになる。


スマホから通知音が鳴った。


愛ちゃんからのメール。


椿ちゃんからの写メ。


そして…


(なんでこんな時に限って来るんだ…‼)


徹からの、電話。


すぐに取る。


「もしもし?どうしたの?」


「あっ、渚~」


「はぁ…。いいから用件を言って」


「いや、用件なんてないよ」


「はぁ?」


こいつは、何を言っているのだろうか。


思わず、耳を疑う。


「用件なんてないよ。渚の声が聞きたかっただけ。」


「…ばっかじゃないの」


素直に言えない自分に泣けてくる。


好き。


付き合いたい。


私も聞きたかった。


好きで好きでたまらない。


大好き。


でも、そんな言葉を口にするのは恥ずかしいから。


「そんな言葉、私以外の誰にも言わないでよ」


「えっ、それって、つまり」


「ピッ」


通話ボタンを切る。


私の心の中をふわふわふわふわ浮かびやがって。


わたあめかよ‼











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