お見合いは未経験
柳田が席を立つ。
「お、柳田くん、元気?」
「成嶋部長!先日はごちそうさまでした!」
「どういたしまして。また、行こうな。榊原、悪いな。準備とかもあるんで、ちょっと早目に来たんだ。」
当然なのだが、見知らぬ社員と一緒に来ていて。

そっか…もう、チームでもないし、同じ会社でもないんだな…。
しみじみ実感してしまった葵は、今更ではあるものの、少しだけ寂しい気持ちになる。

炯は連れてきた社員を榊原に紹介していた。
榊原も初めて会うようで、お互い名刺交換をしている。
あははっ、と聞こえる炯の笑い声に、切なくなってしまう葵だ。

私だって、炯さんのことが好きなのに。
てか、私、こんなに独占欲強かった?

「柳田くん、葵さん、すみません。」
「「はいっ!」」
と2人で返事をして、名刺入れと、メモを手に榊原の席に向かう。

「成嶋部長、は当然知ってるよな。部下の寺崎さん。」
「本日はよろしくお願いします。成嶋部長の部下の寺崎と申します。」
その、寺崎が柳田に名刺を渡し、次に葵に名刺を渡してくれる。

その社員は、はっきり言って炯の100倍くらい銀行員っぽいが、銀行員ではない。
名刺は『資産アドバイザー』となっていた。
その、名刺を見て、葵は気づく。
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