お見合いは未経験
「なあ?そんなにオレのこと、欲しいの。」
「…です。」
「それ、葵の口から聞きたい。言って?」

う…。
ほら、と揺すられる。

「炯さん、愛してる…っ。欲しいの、私、炯さんの、全部が欲しいっ…。」
「葵。オレも。ヤキモチ妬きでも、すぐ、1人でぐるぐるしても、愛してるし、ずっと、お前しかいらない。だから、そんな心配、しなくていいんだ。」

オレの、なんでしょ。
よく覚えている。オレのものになれよ、と言われた。
「そ、です。」
「葵、赤い。」
「だって…」

「やべ。20分たった。行こうか。でないと、マジでやってると思われそう。」
だから…!
軽く唇にちゅ、と、キスされる。

「悪かった。不安にさせたんだな。もう、大丈夫か?」
「はい。ごめんなさい。」
「謝らなくていいから。」戻ろう。これ以上いるとしたくなる。と言われて、葵は慌てて立ち上がったのだった。

「あの…お騒がせしました。」
営業場に戻った葵はそう言って、ぺこりと榊原に頭を下げる。
「ごめんな、榊原。こいつ、何か誤解してたみたいで。」
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