お見合いは未経験
「いや。」
榊原は、基本表情が変わらないことを葵は知っていた。
炯が動じなくて、ケロリとしているのにも葵は驚く。
いや、もうホントにすみません…てか、いろいろ…。

気まずくて仕方ないのだが…。

ふっと息をついて、榊原が言った。
「寺崎くんと、柳田に設営をお願いしてるところです。」
「ああ、寺崎なら大丈夫だよ。一通りの準備は出来ると思うがな。多分。」
その話を聞いても、もう、葵は動揺しなかった。

きっとさっきまでの気持ちなら、いろいろ考えてしまったと思う。
でも、もう、炯との関係は出会った頃とは違うし、付き合い始めた頃とも違う。

それが、分かったから。
私の出来る事をしよう。

葵が会場となる、会議室に向かうとその途中から、会議室までの道筋の案内、ポスターがきれいに貼られている。
もう、着々と準備を進めているらしい。

「ごめんなさい。遅くなって。手伝いますね。」
「お疲れ様です!」
葵が声をかけると、大丈夫ですか?と柳田に聞かれる。

「はい。ホントにすみません…。ここ来るまでの案内とか、見ました。すごいですね。」
「寺崎さんが凄くて。僕もいろいろ勉強になりました。成嶋部長のメンバーって、ホントにすごいですよね。」
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