お見合いは未経験

9.殺さないよ。ただ、死にたいと思うくらいの目に合わせるだけ

「さすが成嶋さんだね。」
「はい。」
真奈がぼうっとしている。

「大丈夫？」
「はい…中にいてはなかなか、分からないですね。熱気があるんですね、現場って。」
「当てられたの？」

「少し…。貴志さんもこの、最先端の中でやってこられていたんですね。すごいです。尊敬します。」
熱気の残る会場を見回して、真奈はそんなことを貴志に言った。

営業場の中で、サポートをしている立場では確かに最前線での熱気は伝わりにくい。
また、今日は成嶋が講師であることもあり、尚更、温度が高めだと、貴志も感じた。

素直な、そんな真奈の様子が可愛らしい。

セミナーは個別相談の質疑応答の時間に入っていて、支店の担当者も、信託の担当者もお客様に捕まって、相談に応じている。

結局、手伝いで来ていたはずの葵も捕まってしまったようだった。
「あ、榊原次長、すみません。」
奥の方で課員が手を上げている。
「はい。」

「先程の方がおっしゃっていた、承継ね、あれいいと思うんだけど。」
お客様が成嶋から、直接、詳細が聞けないのか、と言う。