お見合いは未経験
「成嶋で、ご案内申し上げたのは、ほんの一部の例なので、お客様にそれがいちばん適切かどうかは内容をよく、お伺いして判断させて頂いた方がよろしいかと思います。課員にて、詳しくお伺いしたいのですが、後日お時間を頂けますか?」

「もちろんだよ。」
「大事なことですから、こちらもしっかり対応させて頂きますし、必要に応じて、成嶋にもご紹介させて頂きますので。」

一旦いい、と思うとどうしても先に進みたくなるのが人間というものだ。

だからといって、誰にでも、同じことをすればいい、とは貴志は思っていない。
じゃ、次のアポのお時間をお伺いして、と貴志は課員に指示を出す。

「前のめりにならないように、ハンドリングを頼みます。」
「はい。」
課員が貴志に見とれていて。

貴志はふっと笑って、課員の肩をぽんぽん、とたたく。
「頼みましたよ。」
「あ!はいっ!」

全く、僕に見蕩れていてどうすんるだか…。

全体の様子を把握しようとして、周りを見回し、真奈の姿がないことに貴志が気づく。

ん?真奈…?
廊下か…?

ふと、廊下に出たところで、きゃ…という高い声が聞こえた。
廊下の突き当たりの踊り場で、真奈が誰かと揉み合いになっていたのである。
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