お見合いは未経験
「責任者の榊原と申します。柿沼様、どうぞお掛け下さい。」
先程、確認した相手の名を呼び、貴志は立ち上がっている男性に椅子に座るよう促す。
「榊原次長、今、ご事情をお伺いしていたところだったのですが、勘違い、とのご主張です。」
「勘違い?」
お伺いします、と貴志が笑顔を向ける。
「大袈裟なんだよ。それに君?次長とか?支店長はどこなんだよ。」
怒鳴りつけるような大声で男性はわめく。
「今回のセミナーについては私が責任者ですので、私がまずはお伺いします。支店長にお話しされますか?それでもいいですけど。おおごとにされたいのであれば。」
貴志が口元に笑みを浮かべつつ、冷静に返すと、男性はボルテージを落とし、椅子に座った。
「いや、そもそも、そういう話じゃないしね。」
「お伺いしましょう。」
相手は、担当者と話が出来るか聞こうとしただけだった、とか、不必要に彼女が騒ぎ立てた、とか言い出し、貴志はぶちっと何かキレた音を頭の中で聞いた。
すうっと、貴志は自分の表情が消えるのが分かる。
「私は途中からしか、拝見していませんでしたがね、柿沼様が弊社グループ会社の社員の腕を掴んでいたところしか見ていないんですよ。」
誤解とおっしゃるならそれでも結構ですよ、と薄《うっす》ら笑う。
「銀行というのは、あらゆるところに防犯カメラがついているんです。もちろん階段の踊り場などの、人気がないところには必ず。そのデータは支店で触れないので、本社で管理しているんです。」
先程、確認した相手の名を呼び、貴志は立ち上がっている男性に椅子に座るよう促す。
「榊原次長、今、ご事情をお伺いしていたところだったのですが、勘違い、とのご主張です。」
「勘違い?」
お伺いします、と貴志が笑顔を向ける。
「大袈裟なんだよ。それに君?次長とか?支店長はどこなんだよ。」
怒鳴りつけるような大声で男性はわめく。
「今回のセミナーについては私が責任者ですので、私がまずはお伺いします。支店長にお話しされますか?それでもいいですけど。おおごとにされたいのであれば。」
貴志が口元に笑みを浮かべつつ、冷静に返すと、男性はボルテージを落とし、椅子に座った。
「いや、そもそも、そういう話じゃないしね。」
「お伺いしましょう。」
相手は、担当者と話が出来るか聞こうとしただけだった、とか、不必要に彼女が騒ぎ立てた、とか言い出し、貴志はぶちっと何かキレた音を頭の中で聞いた。
すうっと、貴志は自分の表情が消えるのが分かる。
「私は途中からしか、拝見していませんでしたがね、柿沼様が弊社グループ会社の社員の腕を掴んでいたところしか見ていないんですよ。」
誤解とおっしゃるならそれでも結構ですよ、と薄《うっす》ら笑う。
「銀行というのは、あらゆるところに防犯カメラがついているんです。もちろん階段の踊り場などの、人気がないところには必ず。そのデータは支店で触れないので、本社で管理しているんです。」