お見合いは未経験
まあ、とりあえず引いたって、思っていいんじゃない?と成嶋がケロッとして言った。

「そうかも知れませんね。」
それより、だ。

「僕の、親族?」
貴志は成嶋をすうっと見る。
「あ、そこ、突っ込んじゃう?」
てへへ、と成嶋は笑っていた。

「そぉ。ちょっと前に用事があって、本社ビルに行ったらさ、お兄様が外出から、帰ってきたところで。オレ、つい頭下げちゃって。そしたら、君、誰だったっけ?ってわざわざ来てくれたんだよ。いやー、いい人だよねー。」

こいつは…。
「確信犯じゃないでしょうね…?」
「ち、違うって!ホントに!つい…。あ、お前のにーちゃんだーと思って...。ホント、つい…。」

にーちゃんだーって、学生か?!
「どうして、兄と分かったんですか。」
「経済誌で見た事あったし。で、銀行で一緒に働いててー、今も仲間だっつったら、時間くれたんだよ。30分も。お前、お兄様に愛されてんなぁ…」

美味しいコーヒー、ご馳走になっちゃった、とへらへら笑っている。
いい話があれば、持ってきてくれたらいつでも聞くよって、連絡先交換しちゃった、とか言っているし。
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