お見合いは未経験
「いつも、そうなんですね。」
「人生は、取捨選択だ。お前だって、その歳まで一人だったのには相応の理由があるんだろ。」

そういうことだ、とワインを注がれた。

「僕だって、後悔はしてない。それは本当だよ。でも、たまには他の道を辿ったかもしれない自分を思ったりはする。」
「それって、さっきの後悔してないもん、てやつですか?」

違うよ、と貴広に苦笑される。
「あの道を行っていたら、別の形があったかな、というのは後悔ではないよ。」
「お嫁に行くわけじゃないですよ。」

「なんかさぁ、お前が家庭を持つかと思うと、おにーちゃんとしては、感慨深い訳よ。」
「すごく、複雑です。真奈のことは、とても、大切にしたい。でも、むちゃくちゃにしたいとも思うんです。可愛くて、惹かれる。笑っていて欲しいけど、泣いていても、怒っていても愛しいです。上手く説明出来ないんですけど。」

ふふっと貴広に笑われた。
「お前、それはベタ惚れって言うんじゃないの?」
もう、どんな選択しても、応援する。と貴広に言われて、そうか、と思う。

どの道を選んでも後悔するなら、1番やりたいことを優先させるべきなんだな。

「このタイミングだから言うんだが、お前、もう戻ってこい。」
「え…。」
貴広は真顔だった。
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