お見合いは未経験
「もう、いいだろう?銀行にいてどうするんだ?支店長にでもなるのか?それが何かなるか?」
うちに来てくれたら、もっとお前の手腕が発揮出来る場所があるだろ。
そう言われて…。

貴志はつい、兄の顔を見てしまう。   
何も表情を浮かべていないその顔からは、感情は読みとれなかった。

今日は自分の報告だけと思っていたので、貴広の言葉は本当に思ってもみなかったことだ。
「よく、考えます。」
「だな。」

その後は、結婚式なんて、半年後にしようと思ったら、もう探さないとダメだぞ、とかいろいろ言われた。

今度、真奈をちゃんと実家に連れてこいとか。

そうして、食事を終えて、外で貴広と別れた。
車で送る、と言われたが、貴志はそれを断る。少し寄りたいところがあったので。

貴志が寄ったのは、先日、成嶋と一緒に行ったバーだ。
成嶋に電話したら、ちょうどお客様と別れたところで、近くにいるから今から行く、と言う。
飲みながら待ってる、と伝えた。

バーテンのお勧めをロックにしてもらって、ちびちび飲んでいると成嶋がやって来る。
「榊原が誘ってくれるなんて、珍しいな。」
嬉しそうだ。

オレも同じものちょうだい、と慣れた様子で頼んでいる。
「成嶋さんは、僕が銀行員じゃなくても仲間だって、言うんですか?」
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