お見合いは未経験
「お前、酔ってる?」
「酔ってません。…多分。」

「言うよ。オレはお前の仕事内容を認めてるから。てか、どうしたんだ?」

「今日、兄に会ったんです。真奈の事を報告しようと思って。そしたら、お前は銀行にいて、何かなるのかって言われました。」
「榊原の辛辣なところは、兄さん似なのか…」

「でも、その通りだと思ってしまったんです。今、次長とか言ってますけど、支店長になったから、どうだって言うんですか?」

成嶋は、ロックのそれを一気に煽った。
そして、榊原に向き直る。

「あのさぁ、オレ、銀行辞める。」

「は?!」
成嶋は、バーテンに同じやつ、シングルで、と頼んでいた。

注いでもらったものに、今度は軽く口をつけている。
貴志は少し、呆然としながらそれを見つめていた。

「ちょっと前から言われてたんだけどね、今の会社に正式に来ないかって。オレも似たような事を考えてて。別に支店長になりたい訳じゃねーな、と思ったわけ。」
やー、人事部が焦って飛んできて笑えた、とか言っている。貴志は酔いも一気に醒めた気分だ。

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